競争馬は、些細な骨折でも致命傷となり、安楽死を選ばざるをえないと言われていますが、どうしてなのでしょうか?
また、競走馬と比較して、自然界にいる野生の馬の場合、骨折したらどうなるのか気になりますね。
今回の記事では、馬が骨折したらどうなるのかということについて、まとめていきたいと思います。
競争馬が骨折したら致命傷で治らない?
競走馬の骨折のうちの90パーセント以上が細い4本の脚で起こっています。
そして、さらに範囲を狭めると、脚の中でも腕節(人間でいうところの膝小僧)から足首にかけての下腿部分が、特に骨折しやすく、たいていの場合は、前脚で
起こります。
競走馬は、走っているときに前脚に体重をかけます。
馬は、体に対して脚がとても細いですよね。
その上、前脚の二本には特に負荷がかかるわけですから、当然、その部分が折れやすくなるのです。
骨折と一言で言っても、程度や状態はさまざまです。
小さなひびが入ったり、一部の骨が欠けたり、剝がれたりしている状態は、剥離骨折と呼ばれるもので、比較的軽症です。
一方、重症化するやっかいな骨折は、粉砕骨折と呼ばれるもので、骨に亀裂が入り、名前の通り骨が粉々に砕けた状態です。
それより深刻なのは、開放骨折や複雑骨折と呼ばれる骨折で、折れた骨片が皮膚を突き破った状態です。
軽傷な骨折である剥離骨折はもちろんのこと、粉砕骨折や開放骨折も、現在の医療技術であれば、骨折自体を治すことは可能だと言われています。
しかし、競走馬の場合は、骨折を治療したからと言って、また元に戻れるという単純な話ではありません。
競走馬の場合、骨折したことにより、また新たな疾病を招いてしまうのです。
新たな疾病が致命傷となる可能性が極めて高いため、結局、馬は骨折したらおしまいということになるのです。
骨折した時の治療法と安楽死について
骨折した馬が、必ずと言っていいほど発症してしまう疾病は、蹄葉炎(ていようえん)です。
馬の体重は、400キロから500キロあります。
馬は、4本の細い脚でこの重さを支えているわけですが、脚が1本骨折したとすると、残りの3本の脚で自分の体を支えなければなりません。
3本の脚には大きな負担がかかることとなりますね。
この重みによる負荷を受けるのは、蹄(ひづめ)の部分です。
負荷を受けた蹄は、血行障害を起こし、蹄葉炎を発症します。
蹄葉炎になると、蹄は壊死してしまいますので、とても怖い病気です。
蹄葉炎は不治の病であり、治療は困難であるため、馬を苦しませないよう安楽死を選択することになります。
また、骨折した脚を手術し、うまくいったとしたとしても、骨折した場所が痛いため暴れてしまう馬もいます。
その結果、また別の骨折をしてしまい、安楽死を選ばざるをえないということもあります。
また、骨折のストレスから、腸ねん転、腸閉塞などを患ってしまうこともあります。
内臓疾患の治療はさらに難しく、その場合も安楽死を選ぶしかないのです。
ということで、馬が骨折をすると、結局、安楽死を選択するしかない状況に追い込まれることが多いというのが現状です。
野生(自然界)の馬が骨折したらどうなる?
競走馬にとっての骨折は、ほとんど死を意味することはわかりましたが、野生の馬が骨折してしまった場合は生きられることはあるのか、気になりますね。
野生の馬の場合、ヒビなどの軽い骨折なら助かる場合が多いと言われています。
しかし、骨折の状態が重く、足を地面に付けられない状態が長く続くと、問題になります。
骨折をしていない三本の脚に体重が偏り、負担がかかるため、やはり蹄葉炎を発症してしまうのです。
蹄葉炎になり、寝たきりになった馬は、感染症にかかり、死んでしまいます。
野生の馬も競走馬同様、骨折をすると、生きられる可能性は、極めて低くなるということですね。
終わりに
今回は、馬の骨折が致命傷であるということについてまとめました。
競走馬も野生の馬も、骨折をすれば生きられない運命にあることがわかり、なんだか切なくなりましたね。
馬にとって安楽死は決してかわいそうな方法ではなく、むしろ人間の手で苦しまずに死を迎えることができることは、心安らかなことなのかもしれません。
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